2019年 06月 08日
小生が若かりし頃のジャズ喫茶は「私語厳禁」は当たり前。 プレーヤーの前には「レコードは魂でかけるべし」なんて毛筆の貼紙があって、客はさしずめ寺の修行僧状態。 好みじゃないレコードも熱湯風呂の我慢大会の如く腕を組んで身じろぎもせずひたすらに耐えるしかなかった。 リクエストをするにしてもその店の流儀は絶対で、いつもコルトレーンやドルフィーがおどろおどろしく流れている所に チェットベイカーなぞをリクエストしようものなら・・・・・。社会党の党大会で「君が代」を演奏するに等しい。 その一方で「俺もいつかあんな装置で・・・・・」と夢見る若者にとってはまさにおとぎの国。 小生もご多分に漏れずその中の一人であった。 本誌は、2010年からジャズ批評に掲載された「今日もレコードぐるぐる回るアナログオーデイオふらふら巡り・田中伊佐資が行く」をまとめたものである。 絶滅危惧種”と言われて久しいジャズ喫茶だが、ここに登場するお店たちは敷居の高い眉間に皴をよせた昭和のそれではなく ネアカの平成音楽喫茶であることは、著者が本の題名を決めた理由にも述べられている。 店の親父が長年に渡り格闘した軌跡を”現場の物証”から田中伊佐資さんが軽妙に紐解いていくやり取りが実に面白い。 田中伊佐資さん曰く、「ジャズ喫茶の訪問記や回顧録はあるけれど、オーデイオに突っ込んだ読み物はないように思う。」 これこそが本誌の最大の魅力で、自分のオーディオを横目に見ながらまだまだ精進が足りないと気づかされる。 気になった点が一つ。 巻末のBASIE店主曰く、「ジャズばっかりでなくて、クラシックをかけるとアラが見えてくる。 クラシック用に別のオーディオシステムを作る人がいるけど、それは逃げなんだよね」 サントリーホールやウイーンのオペラ座でジャズ聴いても熱くならない。 白人体型に和服、日本人体型にシャネルのワンピースではサマにならないのだ。 まあ、感じ方も十人十色。だからオーディオは面白い。
by gokurakutojigoku
| 2019-06-08 23:19
| その他
|
Comments(10)
Commented
by
sankanchi at 2019-06-09 13:46
クラシック専用システムとジャズのそれと区別している小生なんぞは、さしずめ逃げかもね?
何でもOKも素敵だろうけど、オンリーワンもかけがえのない魅力があると思うけどナー。 「感じ方も十人十色。だからオーディオは面白い。」と締めて戴きました。 めでたしめでたし・・・。
0
Commented
by
woo
at 2019-06-09 15:13
x
僕はその当時のジャズ喫茶には出入りしてないんだなぁ😞 温室育ちのおボッチャマだったので🤣
Commented
by
gokurakutojigoku at 2019-06-09 21:48
sankanchiさん、クルマもオンロード、オフロードがあるように適材適所です。
コントラバスだってジャズベーシストがピチカートで鳴らしている個体は弓引きしてもしっくりきません。 但し、趣味嗜好の世界は一つの答えではないですから十人十色ですね。
Commented
by
gokurakutojigoku at 2019-06-09 21:53
wooさん、昔の”道場”よりは今の”音楽喫茶室”のほうが居心地いいです。
温室育ちの―ーーーー、アレッ、かなりの不良のイメージでしたが・・・・・。
Commented
by
田中伊佐資
at 2019-06-09 22:02
x
gokurakutojigokuさん、拙著のご紹介誠にありがとうございます。
普通なら「客として私も本に登場しています」と書くところを敢えて伏せるセンスはさすがです。
Commented
by
gokurakutojigoku at 2019-06-09 22:59
田中さん、本を片手に掲載店を周ってみたくなりました。一冊の本に纏まるとまた違った魅力があります。
「伏せるセンス」ではなく、紙面を汚してしまったような後ろめたさです!!!
Commented
by
リベロ
at 2019-06-10 08:15
x
昔、札幌 狸小路のクラシック喫茶にJBL4343が置いてあったね。
Commented
by
gokurakutojigoku at 2019-06-10 13:16
狸小路にあった「ウイーン」は店主が高齢のため一昨年惜しまれながら閉店しました。
一緒に行った当時は4343でしたが晩年はSPもアンプもマッキントッシュでした。 本書に掲載されたお店の店主もご高齢の方が多いので大変そうです。
Commented
by
ゴロゴロ
at 2019-06-12 12:46
x
私も青春時代、ジャズ喫茶に通いまくってました。
地元近くの「トップシンバル」という素晴らしい店で マスターもまた苦味走ったかんじのカッコいい人で 我々にとって人生修養の場でしたね。 数年前にぶらりと訪れたら既に閉店されてたようで寂しかったです・・・ 田中先生の本、また買わせてもらいます。
Commented
by
gokurakutojigoku at 2019-06-12 16:24
|
アバウト
カレンダー
最新のコメント
カテゴリ
フォロー中のブログ
外部リンク
最新の記事
記事ランキング
以前の記事
2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 05月 2022年 03月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 08月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 08月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 最新のトラックバック
タグ
ファン
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||